八ヶ岳美術館(原村歴史民俗資料館)が、このたび、DOCOMOMO Japan(文化遺産としてのモダニズム建築を遺す国際組織の日本支部)が選定する「日本におけるモダン・ムーブメントの建築312選」に新たに選定されましたことをお知らせいたします。
本美術館は、1980年の開館から45年以上が経過した今もなお、八ヶ岳の豊かなカラマツ林と調和し、地域内外の人々に愛され続けています。今回の選定は、その建築的・歴史的価値が改めて世界的な視点から公に認められたものです。
DOCOMOMO Japan公式サイトはこちらからご覧ください。
当館では現在、企画展「アバロス村野敦子写真展 Side Stories:建築と喪失」と、村野藤吾建築展「森との対話 八ヶ岳美術館の設計プラン」を同時開催しております。
企画展では、写真家として活躍するアバロス村野敦子氏による、レンズを通して切り取られた村野の建築の有機的なディテールと、深い愛着の眼差しをご覧いただけます。
建築展では、当美術館が建てられる際の、初期の貴重な設計図面等を展示しています。村野氏がこのカラマツ林の敷地とどう対話したのか、その思考の軌跡を辿ります。
会期は6月28日(日)までとなっておりますので、ぜひ足をお運びください。お待ちしております。
【村長コメント】
このたび、本村の「八ヶ岳美術館(原村歴史民俗資料館)」が、DOCOMOMO Japanによる「日本におけるモダン・ムーブメントの建築312選」に新たに選定されましたことを、大変光栄に思うとともに、深く感謝申し上げます。
本施設は、当村出身の偉大な彫刻家・清水多嘉示先生の作品寄贈を契機に、1980年に全国でも珍しい「村立美術館」として開館いたしました。日本を代表する建築家・村野藤吾先生の晩年の傑作であり、八ヶ岳の豊かなカラマツ林と見事に調和した半球型ドームの連なりや、レースカーテンを用いた柔らかな光に満ちた展示空間は、開館から45年以上が経過した今もなお、訪れる人々を魅了し続けております。
設計にあたり村野先生は、単なる機能性や特定の様式に従うことではなく、構造と装飾を有機的に融合させ、数字には還元できない「人間的な豊かさ(ヒューマニズム)」を空間化することを目指されたと言われています。
専門的な評価においても、ヨーロッパの古典的な交差構造を、近代的な「プレキャスト・コンクリート(PC)工法」という合理的な技術によって寒冷地で実現した、まさに「伝統と近代の融合」の好例であるとされています。
また、特定の芸術家の世界を保存する「永続的な空間」として、清水多嘉示先生の思想と深く共鳴し合い、その個性を包み込むように設計されたとも伝えられています。カラマツ林の中に生物の腕が伸びていくような有機的な配置や、硬質なコンクリートでありながらドレープのような優しさを感じさせる「ソフトフォーム(柔らかい形)」の追求は、自然との共生、そして使う人が愛着を持てる公共性を何よりも大切にした村野建築の真骨頂と評されています。
同時に、本施設は村内から出土した縄文時代の貴重な考古資料を併せて展示する、本村の歴史と文化の拠点として、また地域の子どもたちの学習や芸術を育む場として、長年にわたり住民に親しまれてまいりました。
村野先生が建築に込められた「公共的な回路」――それは、建物を通じて社会や人々へ数字に表れない豊かさを還元する仕掛けにほかなりません。一歩足を踏み入れた瞬間に包まれる静寂な空気や手すりの手触りが生む「使用者のための愛着」、建物を大地の延長と捉え周囲の景観に調和させた「地域への美の還元」、そして時代の変化を受け止める頑丈な「未来への骨格」。単なる行政の機能的な施設に留まらず、これら建築家が仕掛けた優しい仕組みは、45年以上が経過した今もこの地に脈々と息づいています。
現在、本村では本美術館の今後のあり方について検討を進めているところですが、今回の選定は、私たちが守り育むべき価値の大きさを改めて教えてくれたものと感じております。まさにこの「未来への骨格」があるからこそ、私たちは今、次の時代を見据えた有意義な議論を行うことができております。
本村といたしましては、この素晴らしい建築的・文化的価値をあらためて深く認識し、周辺の豊かな自然環境とともに、次の時代へと幸福な形で継承・活用していくため、現在行われている検討会の議論も踏まえながら、今後の適切な維持管理と発展に向けた取り組みをいっそう進めてまいる所存です。
2026年6月19日 原村長 牛山 貴広
【館長コメント】
【八ヶ岳美術館長 コメント】
このたび、当館が「日本におけるモダン・ムーブメントの建築312選」に新たに選定されましたことは、日頃より当館を愛し、支えてくださっている村民の皆様、そして全国から足を運んでくださる来館者の皆様のおかげであり、職員一同、大きな喜びと誇りを感じております。
村長からもありました通り、当館は当村出身の芸術家・清水多嘉示先生の絵画やブロンズ作品と、村野藤吾先生の建築という、二人の巨匠の魂が響き合う唯一無二の空間です。村野先生が設計にあたり、100年後もこの場所に清水先生の彫刻が美しく展示されている姿を思い描き、未来を見据えて作られたと言われるこの建物は、45年が過ぎた今も色褪せることはありません。
八ヶ岳の麓にあって、山脈や岩を連想させる連続するドームの外観、一歩足を踏み入れた瞬間に開ける空間と、包まれる静溢な空気。天井からはレースの絞り吊りカーテンが生み出す柔らかな光が作品と呼応し、窓の外には八ヶ岳の四季折々の自然が広がります。これらが一体となって織りなす人間味あふれる心地よさこそが、当館が長年愛されてきた理由だと確信しております。また、原村歴史民俗資料館として、地域が誇る縄文文化の息吹を間近に感じられる場所としても、大切な役割を果たしてまいりました。
現在、当館は未来に向けた「あり方検討会」を設置し、これからの美術館の姿を模索している大切な転換期にあります。今回の選定は、私たちが日々守り続けているこの空間が、歴史的にも極めて貴重な財産であることを改めて教えてくれました。
この歴史的な節目を契機に、村野先生が建物に込めた「未来への骨格」をしっかりと受け継ぎ、これからも皆様にとって心地よく、新たな芸術と文化に出会える場所であり続けるよう、より一層魅力ある美術館運営に努めてまいります。今後とも皆様の温かいご支援とご愛顧を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
2026年6月19日
八ヶ岳美術館(原村歴史民俗資料館) 館長 宮坂 睦

